記事公開日
最終更新日
アクリルのカット方法とは?必要な工具・機械も解説!

製造業の現場では、アクリル板の加工が必要になる場面が多々あります。試作品の製作や小ロット生産、治具の作成など、アクリルカットの技術は幅広い用途で活用されています。
しかし、「どの方法でカットすべきか」「どんな工具が必要なのか」と悩まれる方も少なくありません。
アクリルのカット方法は、板の厚みや求める精度, 加工数量によって最適な手法が異なります。手作業による簡易的なカットから、レーザー加工機を使った高精度な切断まで、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
そこで、本記事では、アクリルカットの基本的な方法から、必要な工具・機械を解説します。自社での加工を検討されている方も、外部委託を考えている方も、ぜひ参考にしてください。
アクリルカットに必要な工具・機械一覧
アクリル板を加工するには、カット方法に応じた適切な工具や機械が必要です。ここでは、手作業から本格的な機械加工まで、それぞれに必要な道具を整理してご紹介します。
手作業に必要な工具
厚み3mm以下の薄いアクリル板であれば、手作業でのカットが可能です。以下の工具を揃えることで、簡易的な加工に対応できます。
- アクリルカッター:プラスチック専用のカッターで、刃先が鋭く、アクリル板に深い溝を入れることができます。一般的なカッターナイフよりも刃が厚く、耐久性に優れています。
- 定規・直定規:まっすぐにカットするために必須です。ステンレス製やアルミ製の定規を使用すると、刃先のすべりを防ぎ、正確なカットラインを引けます。
- カッティングマット:作業台を傷つけず、刃先の滑りも防ぎます。
- やすり・サンドペーパー:カット後の断面を滑らかに仕上げるために使用します。目の粗さを段階的に変えて磨くことで、美しい仕上がりになります。
- 保護メガネ・手袋:破片が飛散する可能性があるため、安全対策として着用が推奨されます。
手作業によるカットは、初期投資が少なく、試作や少量の加工に適していますが、精度や再現性には限界があります。
電動工具の選び方
厚み5mm以上のアクリル板や、複雑な形状のカットには電動工具が有効です。以下の工具が代表的です。
- 電動ジグソー:曲線カットや複雑な形状の切り出しに適しています。刃の種類を選ぶことで、アクリルに特化した加工が可能です。低速・高速の調整機能があるモデルを選ぶと、溶けにくく綺麗にカットできます。
- 丸ノコ(サーキュラーソー):直線カットに優れており、厚手のアクリル板でもスムーズに切断できます。専用のプラスチック用刃を使用することで、バリや溶けを防ぎます。
- 電動ドリル:穴あけ加工に使用します。アクリル専用のドリルビットを使うことで、ヒビ割れを防ぎながら正確な穴あけが可能です。
- 帯鋸盤(バンドソー):工業用途で使用される切断機で、厚手のアクリル板や大量加工に向いています。刃のスピード調整が可能で、熱による変形を抑えられます。
電動工具を選ぶ際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 回転数や切断速度が調整できるモデルを選ぶ
- アクリル専用の刃・ビットを使用する
- 粉塵対策として集塵機能付きのものが望ましい
- 安定した作業台やクランプで固定する環境を整える
本格的な加工機械の導入検討
高精度な加工や量産体制を構築する場合は、専用の加工機械の導入が検討されます。
- レーザー加工機(CO2レーザー):非接触で高精度なカットが可能です。複雑な形状や微細なデザインにも対応でき、断面が透明に仕上がる「炎仕上げ」効果も得られます。初期投資は高額ですが、加工精度と生産性は大幅に向上します。
- CNCルーター:ルータービットで削りながらカットする機械です。厚手のアクリル板や立体加工にも対応でき、加工の自由度が高いのが特徴です。
- ウォータージェット加工機:高圧水流でカットするため、熱の影響がなく、変形や変色のリスクがありません。ただし、装置が大型で導入コストが高額です。
- NCパネルソー:大型のアクリル板を正確にカットできる自動切断機です。定寸カットや大量生産に適しています。
機械導入にあたっては、加工頻度・精度要求・予算を総合的に判断することが重要です。また、操作習熟や保守メンテナンスの体制も考慮する必要があります。
アクリルのカット方法
アクリル板のカット方法は大きく分けて「手作業」「電動工具」「機械加工」の3つに分類されます。それぞれの手順と注意点を解説します。
手作業でカットする場合
手作業によるカットは、薄手のアクリル板(3mm以下)に適した方法です。以下の手順で行います。
1. 準備と墨付け
アクリル板の保護フィルムを剥がさずに作業します。カットラインを定規とペンでマーキングし、カッティングマットの上に置きます。
2. 溝入れ
定規を当てながら、アクリルカッターで何度も同じ場所に溝を入れます。板厚の1/3〜1/2程度の深さまで溝を入れることが目安です。一度で切ろうとせず、5〜10回程度繰り返すことがポイントです。
3. 折り割り
溝を入れた部分を作業台の端に合わせ、下側に力を加えて折り割ります。パキッと綺麗に割れれば成功です。
4. 仕上げ
断面にやすりやサンドペーパーをかけ、滑らかに整えます。目の粗いもの(#240程度)から細かいもの(#1000以上)へ段階的に磨くと美しく仕上がります。
注意点
- 急いで力を入れすぎると、予期しない方向に割れることがあります
- 室温が低いと割れやすくなるため、作業環境にも注意が必要です
- 曲線カットは手作業では困難です
電動工具でカットする場合
電動工具を使ったカットは、厚手のアクリル板や複雑な形状に対応できます。
丸ノコ・ジグソーを使用する場合
手順
- アクリル板を作業台にしっかりと固定する(クランプ使用推奨)
- カットラインをマーキングする
- プラスチック専用刃を装着し、低速~中速で切断を開始する
- 一定の速度を保ちながら、焦らずゆっくりと進める
- 切断後、断面をやすりで整える
注意点
- 高速すぎると摩擦熱でアクリルが溶けてしまいます
- 刃を押し付けすぎるとヒビや割れの原因になります
- 切粉が飛散するため、保護メガネとマスクを着用しましょう
- 冷却用に水や切削油を使用すると、熱による変形を防げます
ドリルで穴あけをする場合
手順
- 穴の中心位置にマーキングする
- 裏面に当て木をして、板を固定する
- 低速回転でゆっくりと穴を開ける
- 貫通直前は特に慎重に、力を抜いて進める
注意点
- 高速回転は熱で溶ける原因になります
- 貫通時に割れやすいため、裏面の当て木が重要です
- ドリルビットは専用のものを使用しましょう
機械加工でカットする場合
機械加工は、高精度・高効率な加工を実現します。ここではレーザー加工機を例に解説します。
レーザー加工の手順
- データ作成:CADソフトやIllustratorなどでカットパスを作成します
- 素材セット:アクリル板を加工機のテーブルに配置し、焦点距離を調整します
- パラメータ設定:板厚に応じてレーザー出力、速度、周波数を設定します
- 加工実行:テスト加工で確認した後、本加工を行います
- 仕上げ:必要に応じて保護フィルムを剥がし、研磨や洗浄を行います
レーザー加工のメリット
- ±0.1mm程度の高精度加工が可能
- 複雑な曲線や微細なデザインに対応
- 断面が透明で美しい仕上がり(炎仕上げ効果)
- 非接触加工のため、材料へのストレスが少ない
- データがあれば同じものを何度でも再現できる
注意点
- 厚手の板(10mm以上)は加工に時間がかかる、または加工できない機種もある
- レーザー照射による焼け跡が若干残る場合がある
- 初期投資・ランニングコストが高額
- 操作には専門知識と訓練が必要
CNCルーターやウォータージェットも同様に、データに基づいた自動加工が可能で、量産や複雑形状に適しています。
アクリルカットの失敗例と対策
アクリルカットでは、適切な方法や工具を選ばないと、さまざまな失敗が発生します。ここでは代表的な失敗例とその対策を解説します。
割れ・ヒビが入る原因
アクリルカットで最も多いトラブルが、割れやヒビの発生です。
主な原因
- 手作業での溝入れが浅すぎる、または深すぎる
- 折り割る際に不均等な力がかかった
- ドリル加工時の貫通時の衝撃
- 電動工具の刃が鈍っている、または不適切
- 材料の固定が不十分で振動が発生した
- 低温環境での作業(アクリルは寒いと脆くなります)
対策
- 手作業では板厚の1/2程度まで溝を入れる
- 折り割る際は、溝の真下に支点を置き、均等に力をかける
- ドリル加工では裏面に当て木をし、低速で慎重に進める
- 刃物は常に切れ味の良いものを使用する
- クランプやバイスでしっかりと固定する
- 作業は室温20℃以上の環境で行う
- 応力が集中しやすい角部には小さな穴を開ける(R取り)など、設計段階で配慮する
切断面が溶ける・変色する
電動工具や機械加工で発生しやすいトラブルです。
主な原因
- 切断速度が速すぎる、または遅すぎる
- 刃の回転数が高すぎて摩擦熱が発生
- 切粉の排出が不十分で熱がこもる
- レーザー加工でのパラメータ設定ミス
- 冷却が不十分
対策
- 低速~中速で一定の速度を保ちながら進める
- アクリル専用の刃を使用する(刃数が多く、刃先角度が適切なもの)
- 集塵機能のある工具を使用し、切粉を速やかに排出する
- 水や切削油を使った湿式加工を検討する
- レーザー加工では、テスト加工で最適なパラメータを見つける
- 連続加工の場合は、適度に休憩を挟んで材料を冷やす
寸法精度が出ない
試作品や治具として使用する場合、寸法精度は重要な要素です。
主な原因
- マーキングや測定の誤差
- 手作業での切断の揺れやブレ
- 材料の固定が不十分
- 工具の刃のブレや摩耗
- 熱膨張による寸法変化
- CADデータと実加工の差異
対策
- 精密な測定器具(ノギス、マイクロメーター等)を使用する
- 定規やガイドレールを使って直線性を確保する
- 材料はしっかりと固定し、作業中の動きを防ぐ
- 刃物は定期的に交換・メンテナンスする
- 加工後は十分に冷却してから測定する
- 機械加工では、キャリブレーション(校正)を定期的に行う
- 加工余裕(マージン)を設けて、仕上げ加工で寸法を追い込む
高精度が求められる場合は、自社加工よりも専門業者への外注を検討することも有効な選択肢です。
アクリルのカットは自社加工と外注、どちらを選ぶべきか
アクリルカットを行う際、自社で加工するか外部に委託するか、判断に迷うケースは少なくありません。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社の状況に合った選択をすることが重要です。
自社加工のメリット・デメリット
メリット
- 納期の柔軟性:必要なときにすぐ加工できるため、急な試作や修正に対応できます。
- コミュニケーションコストの削減:外注先とのやり取りが不要で、仕様変更もスピーディに実施できます。
- ノウハウの蓄積:加工技術が社内に蓄積され、設計へのフィードバックも容易になります。
- 小ロット・試作対応:外注では採算が合わない少量の加工も、社内であれば気軽に実施できます。
- 機密保持:製品情報を社外に出さずに済みます。
デメリット
- 初期投資:工具や機械の購入費用が発生します(数万円から数千万円)。
- 人的リソース:加工作業に人員を割く必要があり、習熟にも時間がかかります。
- 精度・品質の限界:専門業者と比較すると、加工精度や仕上がりに差が出る場合があります。
- メンテナンス負担:機械の保守管理や刃物の交換など、継続的なコストと手間がかかります。
- 安全管理:工具の取り扱いに関する安全教育や環境整備が必要です。
- 大量生産には不向き:量産体制を整えるには、さらなる設備投資と人員が必要です。
自社加工が向いているケース
- 試作品の製作が頻繁にある
- 少量多品種の加工が中心
- 設計と加工の連携を密にしたい
- 納期を柔軟にコントロールしたい
- 加工技術をコア技術として蓄積したい
外注加工のメリット・デメリット
メリット
- 高精度・高品質:専門業者の技術と設備により、高い加工精度と美しい仕上がりが得られます。
- 初期投資不要:設備や工具を購入する必要がなく、必要な分だけ発注できます。
- 大量生産対応:量産案件でも短納期で対応可能です。
- 多様な加工方法:レーザー、ウォータージェット、CNCなど、用途に応じた最適な加工方法を選択できます。
- 人的リソースの節約:加工作業に人員を割く必要がなく、コア業務に集中できます。
- 専門知識の活用:材料選定や加工方法について、専門家のアドバイスを受けられます。
デメリット
- 納期の制約:業者の生産スケジュールに依存するため、急ぎの対応が難しい場合があります。
- コミュニケーションコスト:図面作成、仕様の伝達、修正依頼など、やり取りに時間がかかります。
- 小ロットの割高感:最小ロット制限や、少量発注時の単価が高くなる傾向があります。
- ノウハウの流出:技術や知見が社内に蓄積されません。
- 機密性のリスク:製品情報を外部に開示する必要があります(ただし、秘密保持契約で対応可能)。
外注加工が向いているケース
- 高精度な加工が必要
- 大量生産・量産が必要
- 複雑な形状や特殊な加工が必要
- 加工頻度が低く、設備投資の回収が見込めない
- 社内リソースをコア業務に集中させたい
判断のポイント
自社加工と外注のどちらを選ぶべきかは、以下の観点から総合的に判断しましょう。
| 判断軸 | 自社加工 | 外注加工 |
|---|---|---|
| 加工頻度 | 高頻度(週1回以上) | 低頻度(月1回程度) |
| 加工数量 | 少量・試作中心 | 量産・大量生産 |
| 精度要求 | 中程度(±0.5mm程度) | 高精度(±0.1mm以下) |
| 納期 | 柔軟性が必要 | 計画的に発注可能 |
| 予算 | 初期投資可能 | 都度コストで対応 |
| 技術蓄積 | 社内に蓄積したい | 外部の専門性を活用 |
なお、両方を併用する「ハイブリッド方式」も有効です。試作や少量加工は自社で行い、量産や高精度が必要な案件は外注するという使い分けにより、コストと品質のバランスを最適化できます。
アクリルのカットに関するよくある質問と回答
Q1.アクリル板とポリカーボネート板の違いは?カット方法は同じですか?
A.アクリル板は透明性が高く、硬度がありますが、衝撃に弱い特性があります。一方、ポリカーボネート板は衝撃に強く、割れにくいですが、傷がつきやすい性質があります。カット方法は基本的に同様ですが、ポリカーボネートはより粘りがあるため、切断時に刃が食い込みやすく、溶けやすい傾向があります。刃の選定と切断速度の調整がより重要になります。
Q2.保護フィルムは剥がしてからカットすべきですか?
A.基本的には、保護フィルムは付けたままカットすることをおすすめします。フィルムがあることで、傷や汚れを防ぎ、カットラインのマーキングもしやすくなります。ただし、レーザー加工の場合は、フィルムが焼けて断面に付着することがあるため、剥がしてから加工する、または専用の低粘着フィルムを使用することもあります。
Q3.曲線や円形のカットは可能ですか?
A.可能です。電動ジグソーやレーザー加工機、CNCルーターを使用すれば、複雑な曲線や円形のカットができます。手作業での曲線カットは非常に難しく、推奨されません。
Q4.キャストアクリルと押出アクリル、カット方法に違いはありますか?
A.キャストアクリルは硬度が高く、切断面が美しく仕上がりますが、やや割れやすい傾向があります。押出アクリルは柔軟性があり割れにくいですが、切断時に溶けやすい特性があります。基本的なカット方法は同じですが、押出アクリルでは切断速度をやや遅めに設定し、熱の発生を抑える工夫が必要です。
まとめ
製造業の現場では、試作開発のスピードアップやコスト削減が常に求められます。アクリルカットの技術を適切に選択・活用することで、製品開発の効率化や品質向上につながります。まずは自社のニーズを明確にし、小規模な試作から始めて、徐々に最適な加工体制を構築していくことをお勧めします。自社での加工が難しい場合や、より高度な加工が必要な場合は、専門業者への外注も視野に入れましょう。
アクリル加工の外注先をお探しの際は、ぜひ日本サカスにご相談ください。