1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

総合プラスチック加工 コラム

記事公開日

制電性樹脂とは?透明な制電板(アクリル・PC・塩ビ・PET)の特徴と選び方、加工時の注意点

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

装置のカバーやクリーンルームの間仕切りなど、中が見える透明な部材には、静電気によるホコリの付着を防ぐために制電性樹脂の板材が使われることがあります。

制電アクリルや制電PCなど素材の選択肢は複数あり、さらに同じ素材でも、制電性をどのように持たせているかによって、曲げや接着といった加工のしやすさが変わります。

この記事では、制電性樹脂の基礎知識から、透明な制電板の種類と特徴、選び方、加工時の注意点までを解説します。

制電性樹脂とは

静電気をためにくくした樹脂

制電性樹脂とは、プラスチックに静電気をためにくい性質を持たせた材料のことです。一般的なプラスチックは電気を通しにくいため、こすれたり、はがれたりしたときに発生した静電気が表面にたまりやすくなります。制電性樹脂は、表面に電気を逃がす層を設けたり、樹脂に帯電防止成分を加えたりすることで、発生した静電気をゆるやかに逃がせるようにしています。

制電性は、表面抵抗率(材料の表面での電気の流れにくさ)で表されます。制電グレードとして販売されている樹脂は、一般に帯電防止グレードと同程度の抵抗値の範囲にあり、透明な制電板では106〜108Ω/□程度の値を示す製品も見られます。ただし、数値は製品によって異なるため、選定の際はメーカーのデータシートで確認することが大切です。

なお、導電性・帯電防止・絶縁性といった抵抗値による区分や、カーボンなどを配合した導電性樹脂については、「導電性樹脂とは?電子部品の静電気対策に使える素材の種類と選び方」で詳しく解説しています。

透明な部材で制電性樹脂が求められる理由

装置のカバーや窓、クリーンルームの間仕切りなどは、中の様子を確認できるよう、透明な樹脂板でつくられることが多い部材です。一方で、透明な樹脂板は静電気を帯びやすく、空気中のホコリや微粒子を引き寄せてしまいます。

ホコリが付着すると、中が見えにくくなるだけでなく、清掃の手間が増えたり、付着したホコリが製品や部品に落ちて異物不良の原因になったりすることもあります。また、電子部品を扱う装置では、帯電したカバーが静電気トラブルのきっかけになるおそれもあります。

カーボンを配合した導電性樹脂は黒色になるため、透明性が必要な部材には使えません。そこで、透明性を保ちながら静電気をためにくくした制電性樹脂の板材が使われています。

透明な制電板の主なタイプ

透明な制電板は、制電性をどのように持たせているかによって、大きく3つのタイプに分けられます。タイプによって加工の向き・不向きが異なるため、素材とあわせて確認しておくことが大切です。

タイプ 制電性の持たせ方 熱曲げ 切断面の制電性 主な注意点
表面コート型 板の表面に制電膜をコーティングする できない製品が多い なし 摩耗や薬品で制電膜が傷むことがある
ラミネート型 板の表面に制電膜を積層する ゆるい曲げなら可能な製品もある なし 製品の種類が限られる
樹脂全体に制電性を持たせたタイプ 樹脂そのものに制電成分を加える 製品による あり 透明な板材では選択肢が少ない

※制電層が片面のみか両面かは製品によって異なります。あくまで一般的な傾向としてご覧ください。

表面コート型

もっとも広く使われているのが、樹脂板の表面に制電膜をコーティングしたタイプです。素材本来の透明性を生かしやすく、アクリル・PC・塩ビ・PETなど、さまざまな素材で製品が用意されています。

一方で、制電性を持つのは表面の膜だけです。膜が摩耗したり、薬品で傷んだりすると、その部分の制電性が低下します。また、熱を加えて曲げると膜にひびが入るおそれがあるため、熱曲げができない製品も多くあります。

ラミネート型

ラミネート型は、制電性を持つ膜を樹脂板の表面に積層したタイプです。コーティングとは異なる方法で制電層を設けることで、透明度の高さや耐薬品性を高めた製品があり、ゆるやかな熱曲げに対応できるものもあります。

ただし、制電性を持つのが表面の層である点は、表面コート型と同じです。曲げの可否や対応できる曲げの程度は製品によって異なるため、加工を予定している場合は事前にメーカーの資料で確認しておきましょう。

樹脂全体に制電性を持たせたタイプ

樹脂そのものに帯電防止成分を加え、材料全体に制電性を持たせたタイプもあります。表面だけに制電層があるタイプと違い、削ったり、切断したりした部分にも制電性が残るのが特長です。

ただし、透明性を保ったまま樹脂全体に制電性を持たせるのは難しく、透明な板材ではこのタイプの選択肢は多くありません。成形品向けの材料として用意されていることが多いため、板材で探す場合は、取り扱いのある素材やサイズを確認する必要があります。

制電性樹脂として使われる主な透明素材

透明な制電板には、主にアクリル・PC・塩ビ・PETの4つの素材が使われています。それぞれの特徴を比較すると、次のようになります。

素材 透明性 衝撃強度 耐熱性 燃えにくさ コストの傾向
制電アクリル 非常に高い 低め 中程度 燃えやすい 中程度
制電PC 高い 非常に高い 高め 自己消火性がある 高め
制電塩ビ 高い 中程度 低め 燃えにくい 抑えやすい
制電PET 高い アクリルより高い 低め 燃えやすい 抑えやすい

※同じ素材でも、グレードや制電層の種類によって特性は異なります。選定の際は各メーカーのデータシートをご確認ください。

制電アクリル

アクリルは、透明性と表面の光沢に優れた素材で、産業機械のカバーなどに広く使われています。制電グレードでも高い透明性を保ちやすく、中の様子をはっきり見せたい窓やカバーに向いています。

一方で、衝撃には比較的弱いため、物が当たりやすい場所や、人が触れて力がかかりやすい部材では割れに注意が必要です。また、アルコールなどの溶剤に触れるとクラック(細かなひび割れ)が生じることがあるため、清掃に使う薬品にも配慮が必要です。

制電PC(ポリカーボネート)

PCは、透明樹脂の中でも衝撃強度が特に高い素材です。耐熱性や耐寒性にも優れており、自己消火性もあるため、安全カバーや、強度と燃えにくさの両方が求められる部材に使われています。

性能が高い一方で、制電グレードの中では価格が高めになる傾向があります。また、アクリルに比べると表面に傷がつきやすいため、頻繁に拭き取りを行う部材では、表面の傷による見えにくさにも注意しておきましょう。

制電塩ビ

塩ビ(硬質ポリ塩化ビニル)は、耐薬品性と燃えにくさに優れた素材です。制電タイプの中ではコストを抑えやすく、クリーンブースの間仕切りや装置カバーなど、面積の大きい部材にも使いやすい素材です。

ただし、耐熱性は高くないため、熱がこもる場所には向きません。また、塩素を含む素材のため、納入先や業界の基準によっては、使用が制限される場合があります。採用前に、社内規格や納入先の仕様を確認しておくと安心です。

制電PET

PETは、透明性が高く、アクリルに比べて衝撃にも強い素材です。燃焼時に有害なガスが発生しにくく、コストも比較的抑えやすいことから、塩ビの代わりとして選ばれることもあります。

耐熱性は高くないため、高温になる環境では使用を避けます。また、燃えにくさが求められる部材では、難燃グレードの有無もあわせて確認しておきましょう。

制電性樹脂の主な用途

装置カバー・安全カバー

半導体や電子部品の製造装置、検査装置などのカバーには、中の動きを確認できる透明な制電板が使われています。静電気によるホコリの付着を防ぐことで、視認性を保ちやすくなるほか、清掃の手間を減らすことにもつながります。人が触れたり、物が当たったりしやすい安全カバーには、衝撃に強いPCが選ばれることも多くあります。

クリーンブース・パーティション

クリーンルームの中を区切るパーティションや、局所的にクリーンな空間をつくるクリーンブースの壁面にも、制電板が使われています。面積の大きい部材になるため、コストを抑えやすい塩ビやPETが選ばれることもあります。防火や安全面の基準がある場合は、燃えにくさも考慮して素材を選びます。

検査装置の窓・保管ケース

検査装置の覗き窓や、部品・製品を一時的に保管するケースなどにも、制電性樹脂が使われています。中身を確認しながら、静電気によるホコリの付着や、部品へのトラブルを防げる点がメリットです。小さな部材でも、曲げや接着を組み合わせてつくる場合は、制電板のタイプによって加工できる範囲が変わるため注意が必要です。

制電板を加工する際の注意点

切断面・穴の内面には制電層がない

表面コート型やラミネート型の制電板は、表面の層だけが制電性を持っています。そのため、切断した端面や、穴あけした穴の内面には制電層がありません。

一般的なカバーや間仕切りでは、端面の面積は小さいため、大きな問題にならないこともあります。ただし、端面や穴の周辺に部品が触れる構造の場合は、その部分の制電性が確保できているかを確認しておく必要があります。また、製品によっては端面の仕上げ方法に制約があることもあるため、加工前にメーカーの資料を確認しておきましょう。

曲げ加工では制電層のひび割れに注意する

透明な樹脂板は、熱を加えて曲げる加工がよく行われます。しかし、表面コート型の制電板では、熱曲げによって制電膜にひびが入ったり、白く濁ったりするおそれがあり、熱曲げそのものができない製品も多くあります。

カバーなどを曲げ形状でつくりたい場合は、熱曲げに対応した製品を選ぶか、曲げずに板を組み合わせる構造にするなど、設計の段階から検討しておくことが大切です。

接着・溶接では制電層の扱いを事前に確認する

板を組み合わせて箱型のカバーやケースをつくる場合は、接着や溶接で部材をつなぐことがあります。このとき、接着剤の種類によっては、溶剤が制電層を傷めることがあります。また、制電層が表面にあることで、接着の仕上がりに影響が出る場合もあります。

溶接でも、熱が加わった部分の制電層が損なわれることがあります。接着・溶接を行う場合は、素材と制電層の種類に合った方法を選び、必要に応じて試作で仕上がりや制電性を確認しておくと安心です。

使用時の清掃・取り扱いにも注意する

表面の層で制電性を持たせているタイプは、使い始めてからの取り扱いによっても性能が変わります。硬いもので強くこすったり、研磨剤の入ったもので拭いたりすると、制電層が傷つき、その部分の制電性が低下するおそれがあります。

また、清掃に使う薬品にも注意が必要です。アルコール類や溶剤は、制電層を傷めたり、アクリルなどの素材にクラックを生じさせたりすることがあります。メーカーが推奨する清掃方法や洗浄剤を確認し、現場の清掃手順とあわせておくことが大切です。加工中や搬入時のキズを防ぐために、保護フィルムをはがすタイミングにも配慮しましょう。

まとめ

制電性樹脂は、静電気をためにくくした樹脂で、透明な板材は装置カバーやクリーンブースなど、中を見せながらホコリの付着を防ぎたい部材に使われています。素材にはアクリル・PC・塩ビ・PETがあり、透明性や衝撃強度、燃えにくさ、コストなどをふまえて選ぶことが大切です。

また、透明な制電板の多くは表面の層で制電性を持たせているため、切断面の扱いや、曲げ・接着・溶接といった加工に制約が出ることがあります。素材とあわせて制電層のタイプを確認し、加工方法や使用時の清掃方法まで含めて検討することで、制電性を保った部材をつくることができます。

制電性樹脂の加工はサカスにご相談ください

制電性樹脂の板材は、素材の特性に加えて、制電層のタイプによって加工できる範囲が変わります。切断や穴あけだけでなく、曲げや接着、溶接を組み合わせてカバーやケースをつくる場合は、設計の段階から加工方法を考えておくことが重要です。

日本サカス プラテック事業部では、液晶・半導体部品をはじめ、さまざまなプラスチック素材の加工を手がけています。プラスチック精密部品の製造から接着・溶接・組立まで一貫した体制で対応しており、使用環境や求められる性能をおうかがいしたうえで、素材選定の段階からご相談いただけます。

「装置カバーに使う制電板の素材を決めかねている」「制電板を組み合わせたケースやブースをまとめて依頼したい」といったお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

CONTACT

お問い合わせ

プラスチック加工に関するお困りごとやご相談、お見積もりのご依頼など、お気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

082-830-2525

9:00~17:00 ※土日・祝日除く