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導電性樹脂とは?電子部品の静電気対策に使える素材の種類と選び方

電子部品の製造や搬送の工程では、静電気による部品の破損やほこりの付着が品質トラブルにつながることがあります。こうした静電気対策の材料として使われているのが、プラスチックに電気を通す性質を持たせた導電性樹脂です。
ただし、導電性樹脂には「導電性」「帯電防止」など性能の異なるグレードがあり、用途に合わない素材を選ぶと十分な効果が得られないこともあります。
この記事では、導電性樹脂の基礎知識から、帯電防止との違い、電子部品向けの主な素材、選び方や加工時の注意点までを解説します。
導電性樹脂とは
プラスチックに電気を通す性質を持たせた材料
導電性樹脂とは、本来は電気を通さないプラスチックに、電気を通す性質を持たせた材料の総称です。一般的なプラスチックは絶縁性が高いため、電気部品の絶縁材として広く使われています。一方で、絶縁性が高いことで静電気がたまりやすいという側面もあります。
導電性樹脂は、カーボンなどの電気を通す材料を樹脂に混ぜ込んだり、帯電防止剤を配合したりすることで、たまった静電気を逃がせるようにした材料です。金属ほどの導電性はありませんが、軽く、成形や切削加工がしやすいというプラスチックの特長を生かしながら、静電気対策ができる点が大きなメリットです。
電子部品の分野で導電性樹脂が求められる理由
電子部品、特に半導体デバイスは静電気に弱く、人や設備にたまった静電気が放電されると、内部の回路が破損するおそれがあります。こうした静電気による破損はESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)と呼ばれ、電子部品の製造現場では重要な品質課題の一つです。
また、静電気を帯びたプラスチック部品は、空気中のほこりや微粒子を引き寄せやすくなります。クリーンな環境が求められる電子部品の製造工程では、ほこりの付着が異物不良の原因になることもあります。
そのため、電子部品に直接触れるトレイや治具、搬送装置の部品などには、静電気を逃がせる導電性樹脂が使われています。
導電性・帯電防止・絶縁性の違い
表面抵抗率による区分の目安
樹脂の電気的な性質は、主に表面抵抗率(材料の表面での電気の流れにくさ)によって区分されます。値が小さいほど電気を通しやすく、値が大きいほど電気を通しにくいことを表します。一般的な区分の目安は次のとおりです。
| 区分 | 表面抵抗率の目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 導電性 | 約105Ω未満 | 電気を通しやすく、静電気をすばやく逃がす |
| 静電気拡散性(帯電防止) | 約105〜1012Ω | 静電気をゆるやかに逃がし、帯電を防ぐ |
| 絶縁性 | 約1012Ω以上 | 電気を通しにくく、静電気がたまりやすい |
※区分の数値は、規格や素材メーカーによって異なる場合があります。あくまで一般的な目安としてご覧ください。
電子部品の静電気対策では、「電気を通しやすいほどよい」とは限りません。抵抗値が低すぎると、帯電した部品が触れたときに電気が一気に流れ、かえって部品を傷めるおそれがあるためです。部品に直接触れる用途では、静電気をゆるやかに逃がせる静電気拡散性の領域が選ばれることも多くあります。
呼び方が混同されやすいため数値で確認する
「導電性」「帯電防止」「制電性」「ESDグレード」など、静電気対策用の樹脂にはさまざまな呼び方があります。これらの呼び方はメーカーや製品によって使い分けが異なり、同じ「帯電防止グレード」でも抵抗値の範囲が違うことがあります。
そのため、素材を選ぶ際は名称だけで判断せず、カタログやデータシートに記載された表面抵抗率や体積抵抗率の値を確認することが大切です。社内の規格や納入先の仕様で抵抗値の範囲が決まっている場合は、その範囲に収まる素材を選びます。
樹脂に導電性を持たせる主な方法
導電フィラーを配合する方法
もっとも一般的なのが、電気を通す粒子や繊維(導電フィラー)を樹脂に混ぜ込む方法です。樹脂の中でフィラー同士がつながることで電気の通り道ができ、導電性が生まれます。フィラーの種類や配合量を調整することで、帯電防止レベルから導電レベルまで、幅広い抵抗値の材料をつくり分けることができます。
主なフィラー・添加剤の種類と特徴は次のとおりです。
| 種類 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| カーボンブラック | 低コストで広く使われている | 黒色になる。配合量が多いと強度や成形性が低下しやすい |
| 炭素繊維(カーボンファイバー) | 導電性とあわせて剛性・強度も高められる | 繊維の向きによって特性に差が出ることがある |
| カーボンナノチューブ(CNT) | 少ない配合量で導電性を得やすい | 材料コストが高めになる傾向がある |
| 金属粉・金属繊維 | 高い導電性が得られる | 比重が大きくなり、重くなりやすい |
| 高分子型帯電防止剤 | 湿度の影響を受けにくく、効果が長く続く | 導電性の領域まで抵抗値を下げるのは難しい |
帯電防止剤を配合する方法・表面処理する方法
フィラー以外では、界面活性剤系の帯電防止剤を練り込む方法や、樹脂の表面に帯電防止剤を塗布する方法もあります。界面活性剤系の帯電防止剤は、表面に染み出した成分が空気中の水分を取り込むことで静電気を逃がす仕組みのため、湿度の影響を受けやすく、時間の経過とともに効果が低下することがあります。
また、表面に塗布するタイプは、摩耗や洗浄、切削加工によって表面の層がなくなると効果が失われます。長く安定した性能が必要な部品や、切削加工で仕上げる部品には、材料全体に導電性を持たせたフィラー配合タイプや高分子型帯電防止剤を使ったタイプが向いています。
電子部品向けに使われる主な導電性樹脂
導電性・帯電防止グレードは、汎用樹脂からスーパーエンジニアリングプラスチックまで、さまざまな樹脂で用意されています。電子部品の分野でよく使われる主な素材を比較すると、次のようになります。
| 素材 | 耐熱性 | 機械的強度 | 摺動性 | コスト | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| 導電性PEEK | 非常に高い | 高い | 良好 | 高い | 検査用ソケット、高温工程の治具 |
| 導電性POM | 中程度 | 中〜高 | 良好 | 中程度 | 精密治具、ガイド、ギア |
| 導電性MCナイロン | 中程度 | 中〜高 | 良好 | 中程度 | ローラー、パレット、搬送部品 |
| 導電性PP・PE | 低め | 低〜中 | PE(超高分子)は良好 | 低い | 容器、トレイ、ケース |
| 導電性PC・ABS | 中程度(ABSは低め) | 中程度 | 普通 | 中程度 | 成形トレイ、ケース、カバー |
※同じ素材でも、グレードやフィラーの種類によって特性は異なります。選定の際は各メーカーのデータシートをご確認ください。
導電性PEEK
PEEKは、耐熱性・機械的強度・耐薬品性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。導電性・帯電防止グレードは、高温での使用や高い寸法精度が求められる半導体の検査用ソケットや治具などに使われています。炭素繊維を配合して剛性を高めたグレードもあります。性能が高い一方で材料価格も高いため、求められる性能とコストのバランスを考えて選ぶことが大切です。
導電性POM
POM(ポリアセタール)は、寸法安定性と摺動性に優れ、切削加工がしやすいエンジニアリングプラスチックです。導電性グレードは、精密な寸法が求められる治具やガイド、ギアなどの機構部品に使われています。比較的コストを抑えながら精度の高い部品をつくれる点が特長です。
導電性MCナイロン
MCナイロンは、耐摩耗性と自己潤滑性に優れた素材です。カーボン系の充てん剤を加えて導電性や帯電防止性を持たせたグレードがあり、電子部品の製造工程で使われる搬送用ローラーやパレット、ハンドリング治具などに使われています。ただし、ナイロン系の樹脂は吸水によって寸法が変化しやすいため、精度が求められる部品では使用環境に注意が必要です。
導電性PP・PE
PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)は、軽量で耐薬品性に優れ、価格も比較的安い汎用樹脂です。導電性グレードは、電子部品を保管・運搬する容器やトレイ、ケースなどに使われています。超高分子量ポリエチレンの導電グレードは、摺動性や耐摩耗性を生かして搬送装置のガイドなどにも使われます。耐熱性は高くないため、高温になる工程には向きません。
導電性PC・ABS
PC(ポリカーボネート)やABSの導電性・帯電防止グレードは、射出成形でつくるトレイやケース、装置のカバーなどに使われています。成形性がよく、量産品に使いやすい素材です。PCは耐衝撃性に優れており、ABSは加工性やコスト面で扱いやすいという特長があります。
電子部品分野での主な用途
ICトレイ・搬送用パレット
ICや電子部品を並べて保管・搬送するトレイやパレットは、部品と直接触れるため、静電気対策が欠かせません。工程の中で乾燥などの加熱処理を行う場合は、帯電防止性に加えて耐熱性や、熱による反り・変形の少なさも求められます。
検査治具・ハンドリング部品
電子部品の検査工程で使うソケットや位置決め治具、部品をつかむハンドリング部品にも導電性樹脂が使われています。これらの部品には、静電気対策に加えて、部品の位置を正確に決めるための寸法精度や、繰り返し使用に耐える耐摩耗性が求められます。
クリーンルーム内の装置部品
半導体や電子部品の製造が行われるクリーンルームでは、搬送装置のローラーやガイド、カバーなどにも導電性樹脂が使われています。静電気によるほこりの付着を防ぐとともに、部品自体から粉が出にくいことも重要なポイントです。
用途に合った導電性樹脂の選び方
必要な抵抗値の範囲を決める
まずは、どの程度の抵抗値が必要かを明確にします。部品に直接触れるのか、装置の一部として使うのか、アース(接地)をとるのかなどによって、適した抵抗値の範囲は変わります。納入先の仕様や社内規格で抵抗値が決まっている場合は、その範囲に入る素材を候補にします。
使用温度・強度・寸法安定性を確認する
抵抗値の条件を満たす素材の中から、使用温度や必要な強度、寸法精度などの条件で絞り込みます。高温の工程で使う場合はPEEKなどの耐熱性の高い素材、精密な寸法が必要な場合はPOMなどの寸法安定性に優れた素材、摩耗しやすい部位ではMCナイロンや超高分子量ポリエチレンなど、用途に合った素材を選びます。
導電フィラーを配合すると、元の樹脂に比べて強度や伸びが変わることがあります。ベースとなる樹脂の物性だけで判断せず、導電グレードとしての物性を確認することが大切です。
発塵やフィラー脱落の影響を確認する
カーボン系のフィラーを配合した素材では、摩耗や接触によってフィラーが脱落し、粉が発生することがあります。クリーンルームや、異物に厳しい製品を扱う工程では、発塵の少ないグレードかどうかも確認しておきましょう。
あわせて、湿度や時間の経過で抵抗値が変わらないかも確認しておくと安心です。長期間使う部品では、効果が持続するタイプを選ぶことで、性能の低下によるトラブルを防げます。
導電性樹脂を切削加工する際の注意点
フィラーによる工具摩耗に配慮する
炭素繊維などのフィラーを含む導電性樹脂は、一般的な樹脂に比べて工具が摩耗しやすい傾向があります。工具の摩耗が進むと、寸法精度や加工面の仕上がりに影響するため、素材に合った工具や加工条件を選ぶことが重要です。
加工後も抵抗値が保たれる素材を選ぶ
表面に帯電防止剤を塗布したタイプの素材は、切削加工で表面を削ると、その部分の帯電防止効果が失われてしまいます。切削加工で仕上げる部品には、フィラーが材料全体に均一に分散しており、加工後も抵抗値が変わりにくい素材を選ぶことが大切です。
また、加工中の熱によって表面の状態が変わることもあるため、重要な部品では加工後に抵抗値を確認しておくと安心です。
寸法精度とバリへの対応
導電性樹脂でつくる治具やソケットには、細かな穴や溝など、高い精度が求められる形状が多くあります。素材によっては加工時にバリが出やすいものもあり、バリや切りくずが残ると、異物の原因になるおそれがあります。加工後のバリ取りや洗浄まで含めて、素材の特性を理解したうえで加工することが重要です。
まとめ
導電性樹脂は、プラスチックに電気を通す性質を持たせた材料で、電子部品の静電気対策に欠かせない存在です。一口に導電性樹脂といっても、抵抗値によって導電性・静電気拡散性(帯電防止)などに分かれ、呼び方もメーカーによって異なるため、数値で確認して選ぶことが大切です。
素材を選ぶ際は、必要な抵抗値の範囲を決めたうえで、使用温度や強度、寸法安定性、発塵の影響などを確認しましょう。切削加工で仕上げる部品では、加工後も抵抗値が保たれる素材を選ぶことや、工具摩耗やバリへの配慮も必要です。用途に合った素材と加工方法を選ぶことで、静電気トラブルを防ぎ、品質の安定につなげることができます。
導電性樹脂の素材選定・加工はサカスにご相談ください
導電性樹脂は、抵抗値・耐熱性・強度・コストなど、さまざまな条件をふまえて素材を選ぶ必要があります。また、切削加工では、フィラーを含む素材ならではの注意点もあります。
日本サカス プラテック事業部では、液晶・半導体部品をはじめ、さまざまなプラスチック素材の加工を手がけています。プラスチック精密部品の製造から接着・溶接・組立まで一貫した体制で対応しており、使用環境や求められる性能をおうかがいしたうえで、素材選定の段階からご相談いただけます。
「静電気対策が必要な部品にどの素材を使えばよいかわからない」「金属部品を導電性樹脂に置き換えたい」といったお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。


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